2021/6/7

糸締め

筝の糸締めというのは簡単ではありません。
 
まずは体力、気力、音感が備わっていることが条件。
 
その上に締める技術が必要です。
 
この技術というのは手さばきはもちろんですが、締めるスピードも重要。
 
遅いとどんどん糸は伸びてきますので、正確な張力に保つことができません。
 
それと楽器により糸止まりの悪いものがありまして、望む強さに締めるには一瞬の気の緩みも許されません。
 
妥協しないことです。
 
またさらに精神力も相当求められます。
 
作業に不手際があったり、箏糸自体に傷等があったりすると、予期せぬところで糸が切れます。
 
そして切れた糸の当たり所によれば大怪我します。
 
そのような状態と常に向き合う強い精神力が無ければよい仕事はできません。
 
一方で糸締めは画一的な作業ではありません。
 
お客様の要望、好み、またそれがその楽器に相応しいかどうか、すべての事柄を正確に把握し判断しなければなりません。
 
かと言ってお客様全員がご自分の好みの締め方を申し出て下さるわけではございません。
 
むしろ半数以上のお客様は僕にお任せです。
 
僕はそのお客様の力の強さ、演奏曲、お箏の状態を自分なりにふまえて締め方を考えます。
 
もうこの仕事を30年近くしていますが、お客様に『本当に良い音になりました』と言われることがいつでも自分のモチベーションを上げてくれます。
 
筝という楽器が今後も継承される限り、この糸締めというのは必須です。
 
糸締め職人が激減している中、この仕事にさらに責任を感じています。